Base Ball Bear 6th Full Album「C2」ドラムレコーディング全曲解説対談
BaseBall Bear 堀之内大介 × Drum Tech 今村公治

今）
10曲目、HUMANです。

堀）
「フマン」とも読める曲ですね。

今）
なるほど！

堀）
サウンドの前に、この曲は今の自分の真骨頂な気がします。
実は、アルバム制作に入る前にメンバーで「今回のアルバムにどの曲を入れるか？」と投票をしまして。僕としてはこの曲を直前まで「なんだかもっといける気がして現状じゃ入れられない。」って思っていたんです。理由は当時わからなかったけど、結果、その理由は自分のドラムにあったんです。

今）
それは納得がいってなかったって事？

堀）
ドラムのハマり方ですね。
デモレコーディングをやった時からそうで、レコーディング本番までしっくりいかなかったんですが、レコーディングではドラム録り最終日(５日間の最終日)だったと思いますが、レコーディング初日に色々とフレーズが沸き上がってきて、最終日までに自宅で暖めて本番に臨んだら、とってもいいハマりになって一番気に入ってしまいました！

今）
へえ〜っ！

堀）
そうなんです。録っている時も今村さんに「こんなの出来るのね！」って褒められた気がします。

今）
そうだったね！よく考えたら、ベボベのレコーディング以外はたまにライブを観るくらいなので、堀君のプレイをマジマジと観るのはいつも年に１度のレコーディングの時しかないから、知らない間に「こんな事やりやがる！」って思わせてくれる(笑)…「やりやがる」はないよね(笑)！
「やりやがる」＝「成長している！」です(笑)！

堀）
師弟なのでいいんです(笑)！

今）
堀くんもそうだけど、メンバーもそれぞれに成長していて、去年まではこんなフレーズやらなかったのにっていう事を見せてくれるのが楽しみの１つでもあります。
「へえ〜っ！凄い！」って(笑)！

堀）
なので、サウンドよりプレイのほうが先に言いたかったんです。

今）
そんな風に思っていたんだね。知らなかった。

堀）
誰にも感じさせたくなかったんで…メンバーにも。

今）
なるほど！

堀）
アルバムに入れると決まった以上は最大の努力をプレイをせねばならないと思っていますし、上手くハマらない事は自分にとっての「HUMAN(フマン)」だったかも知れませんが、これだけバチッとハマるとこんなに好きになるのかと思ってしまうんですね。

今）
産みの苦しみだったのかもね。

堀）
はい。曲作りの最中もメンバーは「いけるよ！いけるよ！」と言ってくれていたけど何かしっくりいかなくて・・、でも最終的にレコーディングでハマった時にメンバーも絶賛してくれたし自分もやり切った感があったので相当感慨深い曲になりました。

今）
ドラムセットはカノウプスバーチキットで、スネアはカノウプスのソリッドアルミだね！

堀）
アルミで5mmの厚さで削り出しって他ではあまり無いですよね！

今）
ないない！

堀）
アルミって軽いイメージですけど、このスネアはアルミの明るさに加え低音もしっかり出る楽器で貴重ですよね！

今）
もう売っていないしね！

堀）
アルミは軽い「クワン！」感が出るものだけど、このスネアは太いのに「クワン！」感もあり、ころがる感もありますね。しかもスネアでだけど４つ打ちですしね(笑)！

今）
頭打ちとも言うね！
完全に王道セッティングだね。

堀）
ハットもニュービートですしね。

今）
これは2005年くらいのブリリアントフィニッシュ(完成したシンバルに更に研磨して光沢を出す)だね。
これ、もうブリリアントがないんだって！何で無くすんだろうね。

堀）
「ニュービート」はその時代、時代に合わせて進化してゆくんでしょう。

今）
なるほど！
このスネアはベボベのレコーディングでは久しぶりだよね？
確か初期の頃には使った記憶があるけど、最近はないもんね。

堀）
ライブではメインだった時もありますし、今村さんがテックで参加しなかった「3.5」枚目のレコーディング時に自分で使ったかも知れません。

今）
この曲はドラムサウンドというより、堀君の「想い」が大きいね。

堀）
はい。
そういう曲があってもいいんじゃないかなって思います。
ホント、偶然というか、タイトルの「HUMAN」ですし、まさに「人間味」ですよね。ドラムって一番人間味が溢れているというか…。
実音に対しての聴こえ方、聴き方、感じ方、感じさせ方っていうのが人によって違うという…。

今）
レジェンドのドラマーの演奏を聴くと、音だけでなくて「あの人だ！」ってわかるもんね！

堀）
やっぱり「必殺技」はあって良いし、無ければいけないと思うし、必殺技だけ出来ても勝てないし…。
ベーシックとなる身体があって、「ここぞ」という時に必殺技が出せる！という状態がいいですね。
自分がこれまでドラムをやってきて３０代になって始めてやりたかったこの感じを出せた曲が「HUMAN」だと思います。

今）
それだけ想いが強いんだね。

堀）
そういう部分でも聴いて欲しいです。
あと、この曲はとても起伏が激しいです。落ちるところは落ちているし、イクところはかなりイッているし…。全ては歌との兼ね合いです。歌に対して自分が一番良いアピールが出来るか？という事です。

今）
当たり前の話だけど、一度に十数曲も録るから曲ごとに色々考えなければならないし、音の区別もしなければならないし、大変だよね(笑)。

堀）
録る順番も大事ですからね。曲調、自分のコンディション、気持ちも…。それは凄い集中力だと思います。