Base Ball Bear 6th Full Album「C2」ドラムレコーディング全曲解説対談
BaseBall Bear 堀之内大介 × Drum Tech 今村公治

 

Artist

Base Ball Bear

date

2015年5月15日

Song name

「美しいのさ」

Studio

HEATBEAT Studio A

Sound Producer

Base Ball Bear

engineer

Mr.Kawazura

Drum Tach

Koji Imamura

m3_1 m3_2
m3_4 m3_1

 

Kit

Snare

Kick

Tom

Floor Tom

 

Ludwig 90' Classic Maple Kit

CANOPUS NV2 6.5

22×16

13×10

16×16

 

Corted A

Powerstroke3 Corted

Ludwig Wether Master

Ludwig Wether Master

 

withリングミュート4cm

dw フェルトビーター

HEAVY
HEAVY

HiHats

Ride

Crash

Carash

China

Sprash

Master Sound14"

Rock Ride 21"

M Crash 18"

M Crash 18"

Oriental China Trash 18"

Z3 12"

A custom Zildjian

A Zildjian

A Zildjian

A custom Zildjian

Oriental Zildjian

Z3

 





今)
3曲目「美しいのさ」

堀)
はい。これは関根(Bass)ボーカルの楽曲ですね。
関根1人でフルコーラスを歌うのが、スゲー久々だと思うんですよ。

今)
何以来?

堀)
「Typical Girl」(「PERFECT BLUE」のカップリング曲)以来じゃないですかね。

今)
いいよね。史織ちゃんが歌うっていうのがあり、楽曲イメージは「さりげない音」って、ざっくりしたテーマ(笑)!

堀)
最初ミュートのギターから始まるじゃないですか、メイン感があるその音が立たなきゃいけないので。
で、ベースもルート感があって、そんな中でドラムは凄い淡々としてるんですよ。

今)
そうだよね。

堀)
歌が乗ったところで淡々とし過ぎるとオイシくないし、でもちゃんとキャラがある状態での音で淡々としていたい…。でも、キャラがあってもさりげない…って、なかなか難しい内容なんですけど。

今)
難しいね。

堀)
そんな中で今村さんが用意してくれたのが、このラディック(Ludwig)。

今)
ラディック90年代のクラシックメイプルのセットだね。
90年代後半の物で、フィニッシュだけ60年代のサイケデリックレッドっていうちょっとサイケなカバリングを施してある。

堀)
皆が好きな色ですよね、これ。

今)
そうだね。ドラマー界ではポピュラーだね。

堀)
あの、ウルトラマンのオープニングな感じ(笑)

今)
はははは(笑)!
フィニッシュが復刻版で、シェル自体はクラシックメイプル、現行のラディックのセットで用意してみました。
で、ドラムが前に来る「それって、for 誰?」part.1みたいな曲の真逆にいて、ギターがその分だけ前にいてドラムが少し後ろにいる。

堀)
そうですね。

今)
そもそも「前・後」って一体なんだってね。

堀)
多分、ヘッドホンで聴いてれば一番分かりやすいですね。

今)
要は音源聴いた時に、ドラムは奥まって聴こえるようなMIXになっていて、ドラムはあえてガツンとこないんだよね、こういう曲は。

堀)
ドラムが「ガツンと来る」って、僕が一番分かりやすい表現で「ドラムが額に当たる音」っていうのがありますね。
ヘッドホンで聴いていて額に当たってくる様な音っていうのが前に出てるって分かりやすいと思うんですけど。

今)
これはあんまり額に来ないもんね。

堀)
そうですね。だからちょっと全体的にまぶしてある。

今)
まぶしてある。良い表現ですねー。
ドラムの音も、額に当たってしまう強さを持ったドラムセットと、少し柔らかくて優しくて他の楽器にも上手く混じってバランスは取るんだけど自己主張はしない。ちょっと控えめな人な感じ。

堀)
だから女性ボーカルにはピッタリかもしれないですね。

今)
控えめな感じを持ったドラムセットっていう認識であえてこのセットを選んでみました。
で、ラディックって言葉もこれからいっぱい出てくるんだけど、アメリカのドラムメーカーで世界のロックを支えたドラムと言っても過言じゃないほど有名なドラムメーカーです。
60年代・70年代、ビートルズのリンゴ・スターから始まり、ハードロック界のスーパードラマー、コージーパウエルとかディープパープルのイアン・ペイスとか、クイーンのロジャー・テイラーとか…みんなラディックだったんだよね。そういう歴史のあるドラムセットで僕も大好きで何種類か持ってるんですが。

堀)
僕のライブのメインもキックとフロアがラディックですからね!

今)
そうそう。80年代のね!
ラディックの中でクラシックメイプルは現行でも出ている物なので現代感もあって、ヴィンテージ感も多少あって古い音がするドラムセットでもあるんだよね。
「ヴィンテージ感」って言葉は他の曲でも出てくるんだけど、これはヴィンテージ感もありつつ額に当たらない主張しない控えめなドラムセットってことで使いました。それが、史織ちゃんの女性ボーカルにも凄く合っているし、特にこのスネアだよね。

堀)
そうですね、これはウッドですね。
ブロンズとかブラスじゃなくて木の素材です。
ウッドにもいっぱい種類ありますけど。

今)
ありますね。
で、これはカノウプスのネオヴィンテージシリーズ。
カノウプスのオリジナルでカノウプスさんがイメージするヴィンテージドラムを現行で再現したっていうのが、ネオヴィンテージシリーズ。その中のNV2はラディックをイメージしてるんじゃないのかなーって思うんだけど。これは60年代ラディックのスネアをイメージして作っているんじゃないのかな?
これをわざと持ってきてウッドスネアで少しヴィンテージ感ある、イメージで言うと優しい音・あたたかい音・丸みのある音って書いてあるんだけど、これを全て網羅出来るという点で金属スネアじゃなくてウッドを選び、数あるウッドの中でもこれを選びました。
このNV2ってスネアは60年代ラディックと同じ素材でメイプル/マホガニー/ポプラの合板っていう面白い素材で、割と渋い音・優しい音・太い音・高い音って全て網羅出来るから、じゃあそれにしようかってなって、実際にチョイスしたら良かったと。

堀)
これもまたリングミュートが4cmで、さっきのこぼさないでShadowと同じですね。

今)
スネアの打面がコーテッドアンバサダーの薄いやつを使ってて、世間で言うとノーマルだよね。

堀)
そうですね。ノーマルのアンバサダー1枚皮の。

今)
だからそんなにバチンバチン来ない、ポピュラーでオーソドックスなヘッドを使い。
でね、このドラムセットはバスドラムのヘッドだけは王道のレモ(REMO)ってメーカーのパワーストローク3コーテッドを使ったんだけど、タムはあえてラディックの純正ヘッドウェザーマスターにしたんです。

堀)
今まで話してるヘッドは全部レモなんですけど、ラディックでも勿論ヘッドを作っていて、だからラディックのオリジナルのヘッドですね。これも一応コーテッド系ですね。

今)
たぶん作り方が違うんだよね。

堀)
違いますね。
でも、コーテッド系なんでクリア系とは違いあたたかみがありますね。
キックもパワーストローク3のクリアをさっきの2曲では使っていたんですけど、これはコーテッドで、この曲に関してはスネアもタム類もキックも全部コーテッドですね。

今)
そう、それでわざとタムをラディックのヘッドにしたことによって、少しパンチ力が無いようにしてて。

堀)
弱いって言うと変ですけど、優しいって感じですね。
スネアもさっきまでの「ダシッ」系じゃなくて「タンッ」って感じですね。

今)
うんうん。
で、一応、6.5インチって割と深胴を使ったんで、人によっては「ダッ」「ダシッ」て聴こえるんだけど、またこれも違った「ダシッ」かも知れないよね。

堀)
だからもう「タッ」と「ダシッ」の間ぐらいの(笑)!

今)
じゃあ、なんて言うんだ?!...みたいな(笑)!

堀)
「タシッ」でもないし…。

今)
あっ、「タッダシー」みたいな感じかもしれない(笑)!

堀)
その感じのバランスで、優しい音を表現していると言うか。
より馴染みの良い音ですね。これ写真で拡大して見てもらうと分かると思うんですけど、他の曲とは違ってライドにミュートもしてるじゃないですか。

今)
あー、はいはいはい!

堀)
だから、シンバルも色々考えてこのチョイスしてると思うんですね。

今)
そうだね。

堀)
ハットに関してはずっとこれ単調な曲でハット刻みで行くんですよ。でも、そこでハットがあまりにも地味になり過ぎるとオリジナル感が出なくなってしまうというか…。
勿論、叩いてる人が違うからオリジナルにはなるんですけど、こういうセットでも何か変な所が欲しいというか。

今)
堀君のアイデンティティーだね!キャラ付けが好きだよね(笑)!

堀)
そうなんですよ(笑)!曲ごとに何か変な部分を残したいっていうか、面白い違和感は有りだと思っている人なんで。
その違和感の要因のひとつは、このハイハット。Aカスタムのマスターサウンドで、ちょっと明るめでキラッとしているハットをわざと選んだんですけど。

今)
これはね、僕の発想には無かった。ニュービートとかKとか、オヤジチョイスになっちゃう(笑)。

堀)
でもそれは、絶対ハマるんですよ!王道だったら、いいんですよ、それで。

今)
でも、そこをあえて外すのは凄いよ、やっぱり。「あっ、考えてんなー」って思った。

堀)
実はこれ、なんだかんだハットが肝になる曲だったんで、でも、それ以外のシンバル類に関しては小さめで曲に馴染みやすいものをチョイスしています。

今)
落ち着いてる系で選んでるよね。

堀)
チャイナも少し小さくなってますし、20インチじゃなくて18インチ使ってて。

今)
あー本当だ。
チャイナが小さくなると音程が高くなるもんね。

堀)
そうなんですよ。やっぱり女性ボーカルを意識しているセッティングになってますね。

今)
「それって、for 誰?」part.1とは全く違う音作りだよね。
これがまたBase Ball Bearのこだわりというか…。
この曲を「それって、for 誰?」part.1と同じドラムセットを使うと痛くて聴きづらいものになってしまい優しさが無くなってしまって史織ちゃんの声と合わなくなって、違和感あるサウンドになっちゃうんだよね。

堀)
同じドラムセットを使って、EQをいじったり、差し替えをしたりという作り方も勿論あるんです。そういった手法を全く否定しているわけでもないですし、同じセットで貫き通すのも有りなんですけど、僕は特に今回のアルバムレコーディングでは曲ごとに生の楽器のポテンシャルを引き出して、しっかりその曲に合った表現をしたくて。

今)
「曲ありき」ってことだよね。

堀)
そうです。
勿論それで、「ライブどうすんだ?!」って話になるかもしれないんですけど。ライブでは各曲のそういう考えを踏まえて最大限に表現出来るドラムセットを使っているんですけど、EQとか差し替えでどうにかなるよってしたくないのが、今回の作品の特徴でもあるので。

今)
そうだよね。エンジニアの川面(かわずら)さんは、素晴らしいエンジニアで、凄く生音を大切にしてくれる方で。「マイク立てるだけだったよ」って言ってくれて嬉しかったよね。

堀)
「生音が良いから!!」って、あの発言は最高でしたね。

今)
生音でしっかり表現出来ているんで、エンジニアさんとしては余り手を加えなくていいというか、「ノンEQ&フラットでやればOK」って言って下さったので非常に有り難かったです。

堀)
有り難いですね。

今)
スネアサウンドで、同じ「ダシッ」でもシェルの素材が金属か木製かってだけで、こんなに聴こえ方が違うし。
「どういう音が好きか?」ってなった時に、「どっちかな?」って考えていくと選びやすいかも知れないね。

堀)
サウンドだけじゃなくてプレイの面で話をすると、実はコレ皆大好き4つ打ちなんですよ、でももしかしたら一部分の人の中での4つ打ちってこれじゃないしょ?って所が多少あるかもしれません。
「テンポ160でハイハット裏打ちが4つ打ちの全てじゃないよ」っていうのは、ちょっと言いたいなと。これ実はストレートな8ビートでスネアとハットが刻んでいてキックが4つ打ちなんですよ。
なので「何が4つ打ちなのか?」というのを、このアルバムを通して分かって欲しいなとも思います。

今)
でも8ビードなんだよね。


堀)
そうです。基本は8ですね。キックが4分なだけであって基本聴こえ方的には8ビートです。

今)
そこは、アンサンブルの面白さだよね。

堀)
ベースのミュートもエイトで取っているので、そこに合わせたハットの8ビートで…だからさっき言ったハットの音にこだわるのもそこなんですよ。

今)
なるほどー。

堀)
「クローズハットで8ビートでずっと刻んでる」と印象付けておいて、でも実はキックは4つ打ちだよっていうオチという。そういうところを聴いて頂きたいと思います。
 		

 

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