Base Ball Bear 6th Full Album「C2」ドラムレコーディング全曲解説対談
BaseBall Bear 堀之内大介 × Drum Tech 今村公治

 

Artist

Base Ball Bear

date

2015年5月13日

Song name

「それってfor誰」part.2

Studio

HEATBEAT Studio A

Sound Producer

Base Ball Bear

engineer

Mr.Kawazura

Drum Tach

Koji Imamura

m12_1 m12_2
m12_3 m12_4

 

Kit

Snare

Kick

Tom

Tom

Floor Tom

CANOPUS NV2 Toms

CANOPUS NV2 5"

Ludwig 20×14

10×6

12×8

16×16

& Ludwig 1960's Kick 20"

Corted A

Powerstroke3 Corted

Corted A

Corted A

Ambassader X

withリングミュート5cm

dw フェルトビーター

 
 
 

HiHats

Ride

Crash

Carash

China

 

K Zildjian Hat 14"

Heavy Ride 20"

Dark Crash 17"

Dark Crash 19"

China Boy Hi 20"

 

K Zildjian

K Zildjian

K Zildjian

K Zildjian

A Zildjian

 

 





今)
いよいよラストの曲です。 

堀)
そもそも、このアルバムは「それって、for 誰?」part.1で始まり、「それって、for 誰?」part.2で終わろうと決まっていました。

今)
ほう!

堀)
曲調はpart.1が4つ打ちであのくらいのテンポ感で「どしっ!」と構えた曲に対してpart.2はラストという事もあってビートはジャジーなものも少し感じつつ、あまり重くならず、リズムパターンも今まであまりやってこなかったパターンで「跳ねているっぽい曲」ですね。

今)
ジャズロックというよりカントリーロックかもね!

堀)
そうかも知れません! でも完璧に跳ねていないところが面白いと思っています。

今)
そうだよね! だから、バスドラムもあえて重くせずに「レインメーカー」と同じ60年代ラディックの20インチを使用して、タム類はカノウプスのNV2を使ったね。

堀)
面白いのが、「文化祭の夜」でもタムはNV2で、タムに使ったヘッドはコーテッドアンバサダーでフロアがコーテッドエンペラーだったのに対して、この曲はフロアだけエンペラーより少し薄いアンバサダーXを貼っていて、フロアだけ弱冠軽めにしてあるところが今村さんのこだわりが見える点ですね。
その感じが良くて、自分も気持ちよく乗れました。

今)
そうだよね。「文化祭〜」のキックは22インチに対してフロアはエンペラーで、今回はキックが20インチだったのでバランス考えてアンバサダーXにしましたが、それだけではなくて、堀くんのフィルだったりフレーズだったりがエンペよりアンバサダーXのほうが良さそうって判断したんだと思います。 
エンペだと「ズンッ」って感じで止まってしまう感じがするけど、アンバサダーXならフロアの低音感もありつつ、弾けた感も出てよかったと思います。

堀)
曲の中でスネアとフロアを一緒に「ガンガンガンガンッ!」ってクレッシェンドするところ、それを僕は「パンプアップ」と呼んでいますが、その部分がしっかり聴こえるところが良かったです。それでスネアはカノウプスNV2の5インチですね。

今)
そうです。同じスネアで6.5インチもあって他の曲でも使ったけど、この曲はいい意味で軽快感を出したいと思ったので、5インチにしました。

堀)
そしてリングミュートは5cm!こうして写真付きで話すとメッチャ楽しいですね!

今)
そうだね!リアルだよね!

堀)
シンバルに関してはKジルジャンで統一してますね。

今)
そうそう。基本をKで統一して、少し「渋さ」を出そうとしました。

堀)
サビの刻みがライドなので、うるさくならないように考えていましたね。

今)
そうそう。

堀)
音決めの際に、一度、ライドをAジルジャンのロックライドを試したけどちょっと強過ぎた感があってKにしたんですよね。

今)
「音決め」と言えば、ちょっと話は違うけど、メジャーでやっているアーティストのレコーディングって「時間との戦い」という部分があるじゃない?
CD作るのに一流のレコーディングスタジオを何日もお借りしてやる訳だから、ちょっとエグい話かも知れないけど「制作予算」というものがあって、1日に何曲リズムを録らなければならないかが決まっているので、好きなだけ音決めをして良い訳でもないよね。

堀)
そうですよね。予定時間をオーバーしてしまったら、損失がどれだけ出るかも意識してやらねばならい宿命にあります。

今)
なので、音に対するこだわりを与えられた時間の中で「どれだけこだわるのか?」が勝負になってくるよね。

堀)
そうですね。
前の曲でも話しましたが、こだわってやった事が「こわだり」でなく「ただのエゴ」になってしまう事もあるので、そこは慎重に判断しなければならないですよね。
だから、僕は「事前にどれだけイメージしてスタジオに入れるのか?」が大事だと思います。イメージする為に他のアーティストのCDを色々聴くのですが、そのCDの聴き方も色々あって…例えばファンとしての聴き方、プレイヤーとしての聴き方はまた違うし、それらを含めて自分の音楽に対して「どういうアプローチをしよう?」「どういう音にしよう?」と事前に何パターンか候補を考えてスタジオ入って、いざ 叩いてみたら全然違った!...みたいな事もあるから、そういう事態も頭に入れておかないと、いざそうなった時に次の一手が出せないという事になるので、ちゃんとイメージして挑もうぜっていうのはありますね!

今)
そうそう。こだわり過ぎて、何時間も無駄にしてしまって何万円も無駄にしてしまうって事があるし、選択肢として沢山の楽器があるという事は、逆に選択し過ぎて失敗する・・というリスクも伴うから、気をつけないと…と思うよね。

堀)
そうですね。

今)
でもさっきのライドの話に戻れば、「前の曲で使ったライドを次の曲でもそのまま使ってしまえ」っていう事もよくある事だと思うけど、AジルジャンのロックライドをKジルジャンのヘビーライドに変えたからって、その変化をいったいどのくらいの人がわかるのか?と言えば微妙だとは思う…。
だけど、その小さな小さな“こだわり”を1つ1つ積み重ねてゆくと、誰もが納得出来る大きな“こだわり”に変わってゆくという事があるから、与えられた時間の中でギリギリまでこだわって、その時のベストなチョイスをする事を大事にしたいよね。

堀)
それが僕の理想のドラムライフです!

今)
1つ1つの作業に対して誠意を持って丁寧にやってゆきたいよね。レコーディングの手法として、あえて同じキット、同じシンバルで色々な曲をやる!という「楽器ありき」なアプローチもあるよね。

堀)
そうそう。その場合はライブでも同じ音で表現出来るという良さがあるし、それはそれでいいと思います。

今)
そう、だから決して「楽器を変えなければいけない」という話ではなく、今回のベボベのアルバムは「楽曲ありき」のアプローチだから、1曲1曲の楽器を変えて、その楽曲に最も合う楽器をチョイスする・・という話だからね。
だから、ドラムテックという立場での存在意義としては、小さなこだわりを大切にして、その積み重ねが、結果、楽曲全体に良い影響を及ぼす何かに繫がったり、それがドラマーが気持ちよくイメージ出来る事に繫がったり・・。
例えば僕たちがこだわった何かが目に見えないレベルで「あんまり効果なかったかな…?」って思う事があっても、後の作業でコイちゃんが「歌いやすかった」という事に繫がる事もあるからね。
そういう事を意識して毎回やってゆく事と、全く意識しないでやってゆくのでは全然違った結果になってしまうから、大事にしたいよね。

堀)
僕もこだわらずに録った時に、同じ音だったという事に違和感を感じない人にはなりたくない。

今)
うんうん。

堀)
やってみたら音楽的に「同じ音になっちゃった」は有りだと思うけど、意図してないのに「なっちゃった」は無いと思うんです。
意図せず「なっちゃった」を気にならない人にはなりたくない。
やっぱり自分のルーツの話になってしまいますが、自分が好きな音楽、自分が聴いていてテンション高くなる音楽、好きになった音、あのドラムセット・・など、全部の理想が詰まっているアルバムを自分で作りたいし、ライブでもそういう気持ちはずっとあるし、以前、今村さんから聞いた工藤さん(アースシェイカー)の「ライブ会場にお客さんが来て、開演前のステージにセットされているドラムセットを見ただけでワクワクする。そんなドラムセットでないといけない」というお話が好きで、自分のセットが登場しただけで「次は堀くんだ!」ってお客さんがわかるセットでいたいというのは理想だし…。
だけど何でレコーディングでは、こんなに多彩なセットで多彩な音を出しているかと言うと、生音にこだわっているから、1曲1曲に自分はテーマを持っているから、それはアルバム全体を通してのバンドとしてのテーマとは別に個人のテーマだと思うんですけと、ドラマーとしてそこを持つのは大事だと思うんです。
勿論、Base Ball Bearというバンドが好きで、曲を好きで、ファンの方は聴いて下さると思うんですが、それよりもっと深いところで、僕らが使った楽器や演奏も好きになってもらえると更に嬉しいんです。
最初に言った「ブレス感」というか、ヴォーカルのブレスが聴こえるとよりリアルに感じるように、ドラムの音を聴いた時に、自分がスティックを振りかぶっている感じを感じ取って欲しいというか・・。一打一打を叩いている感じが伝わってくる音とか、ある曲のセクションからセクションへ移る時のあの「間(ま)」が聴こえてくるとか・・、シンバルの余韻が残った状態でサビに入っているとか…

今)
そうやって1つ1つにこだわりを持って作り上げたアルバムだから、プロモーションの時に「是非買って聴いて下さい!」って心の底から言えるんだね。
勿論、「このシンバルは何使ったんだ?」って耳で聴くのはドラマーだけかも知れませんが(笑)、それだけこだわったアルバムだから、リスナーの方にはコピーせずにちゃんと買って聴いて欲しいと思うよね。

堀)
そこですね!はっきり言って「CDで聴くと音良いから!」って言いたいです。

今)
mp3じゃないしね(笑)。

堀)
マジで、CDの音は自分達がその音を想定して作っているから、その音質でちゃんと聴いて欲しいです!

今)
そうだよねえ〜〜っ!

堀)
スマホから流れる音もいいけれど、やっぱCDで聴いて欲しいからCDを作っているので、CDで聴いて欲しいなと思います!
あともう1つリクエストするなら、可能な範囲で「爆音」で聴いて欲しいです(笑)!
ご近所に怒られない範囲での最大の爆音で聴いてもらって、何か感じて欲しいです。

今)
何にも考えずにチャラっとCD作っているアーティストはいないしね。

堀)
ホント、僕の生き様ですから。

今)
ホントそうだよね。相当パワーを注入しているよね。

堀)
記録であり、証であり、生き様を刻み込んでいるだけです。

今)
既にシメに入ってしまっているね(笑)。

堀)
はい(笑)!
やっぱり、曲作りもそうですが、自分は何の為に演奏しているのか?どういう気持ちでミュージシャンになったのか?何がしたいからミュージシャンになったのか?...とか、その答えを常に心のどこかに持っていたいですね。
常に僕はドラマーでいたいと思っているし、それが全てじゃないですかね。
ドラムを始めた時に抱いた気持ちを今でも持ち続けていられる人でありたいです。

今)
僕らドラマーは、普段はあまり目立たない存在だし、ライブでも後ろにいるし。
でもそういうドラマーが楽曲の為やライブの為に色々な調和を考えて演奏し、それを受け止めたベーシストがいて…。

堀)
それを受け止めたギタリストがいて…。

今)
それを全て受け止めたヴォーカリストがいてバンドが成り立っている事を改めて知るきっかけになったらいいね。

堀)
やっぱり好きな音楽や愛着を持った楽器を研究していきたいし、プロのミュージシャンを目指す人達にはそれを頑張って欲しいです。好きな事を研究して追求する事は100倍にも200倍にもなって自分に返ってくるし、それを表現して「オリジナル」と呼ばれたら最高です。

今)
今回、これだけこだわって作ってしまったから、次作はどうするんだ?って話はあるよね(笑)。

堀)
はい。でも、もしかしたら次作はドラムセットが減るかも知れませんよね?

今)
そうだよね。 次作のコンセプトによるよね!

堀)
そうです! コンセプトによっては、あえて20インチのキックだけで全曲やりますとか、あえて26インチだけでやるとか(笑)!

今)
来年(2016年)ベボベのメンバーがどういう音楽を作るか?によるよね!

堀)
はい! 健康的に自然にそうなると思いますし、それが「生き様」という事ですね。レコーディングという密室空間だけでなく、ライブになれば、あれだけ沢山のお客さんがいる空間になりますので、本当に気持ち良いし、ライブ会場ごとに違う刺激をもらっていますので、そこからインスパイアされる事も多いですので、レコーディング現場だけじゃなくてライブなど様々なところから得た事が全てクリエイティブに繫がるといいです。

 		
m12_1 m12_2

 

BACK TOP NEXT

 

 

© 2015 imamura-drumtech.com