Base Ball Bear 6th Full Album「C2」ドラムレコーディング全曲解説対談
BaseBall Bear 堀之内大介 × Drum Tech 今村公治





今)
では最後に今回の対談のシメにいきたいと思いますが、堀君、お願いします。

堀)
これまでも言ってきた事の繰り返しになるかも知れませんが、「ドラムって面白いぜっ!バンドって面白いぜっ! 以上!」って感じですね!

今)
うんうん。

堀)
結局、同じドラムセットを叩いても同じ音にはならないですから…。それが“ドラム”というものなんだと思います。

今)
そうだよね!

堀)
例えばギターだと、同じギター&同じエフェクター&同じ設定の場合、
最終的にはギタリストの弾き方で違ってくるけど、ドラムほど差がない気がします。
それが面白いんですよ。

今)
うんうん。

堀)
この写真のドラムセットを僕と今村さんが叩いても同じ音は出ないですからね!
それがドラムの魅力の1つだし、ドラマーがバンドに入った時の面白さだと思うんです。

今)
そうだよね。ドラマーが変わったら、リズムもノリも全部変わってしまうもんね。

堀)
だからバンドって面白いし、ドラマーって大事だと思います。

今)
そうだよね! もっと僕たちドラマーを大事に扱って欲しいね(笑)!

堀)
「ドラマー」ってちょっと面白い人と言うか(笑)、何か若干すべっている人が多いと言うか…(笑)。学級委員長みたいな人がドラマーになる場合もあるし、逆に黙って静かにみんなの事を受け止めるような人がドラマーになる場合もあるし…。色々なキャラがありますけど、みんな懐が深いんですよね。

今)
ドラマーってバンドをまとめる役割りがあるもんね。

堀)
そうなんです。ドラマーになった事で人としての人格が形成される事もあると思いますし、
結果として「ドラマーをやってきて良かったな」ってなれば最高だと思います。

今)
うんうん。

堀)
ドラマーって「おもしろ人間」になれると思います(笑)。ドラマーって面白いですから(笑)。これから音楽をやろうかと思っている人にはドラムを好きになって欲しいです。「タイコ」っていう楽器を…。

今)
日本という国に住んでいる我々はドラムの練習をしにくい、ドラムという楽器を手に入れにくい環境だと思うのね。
アメリカ出身のドラマーのインタビューでよく読んでいたんだけど、そのドラマーの家はアメリカ郊外で隣の家まで数百メートルあるので騒音の心配もなく、家の裏の納屋にドラムセット入れて、朝から夜まで叩きまくっても誰にも怒られなかった…という話があって。
日本では(特に都会では)住宅が密集しているし、マンション住まいも多いし、そんな中でドラムセットを叩くなんて到底無理な話だよね。
その分、今の時代はどんなリハスタやライブハウスにもとても高級なドラムセットが置いてあるので、とりあえずドラムセットがなくても困らない。むしろ、ドラムセットは置く所がないから困る…という話もよく聞きます。
僕が20代の頃(1980年代)、ライブハウスには今みたいに高級なドラムセットはおろか、ドラムセット自体が無かったので、対バンでライブをやる時はバンド同士で「どのバンドがドラムを出すか? アンプを出すか?」を相談して楽器を出さねばならなかったんです。
僕は18歳の時に「プロドラマーになる!」と決心して、一番最初にやったのがプロユースのドラムセットを揃えることだったんです。勿論、36回払いで(笑)。
そして、エアコンも付いていない軽のボロボロな1ボックスの車を機材車として買いました。
そして、その経費を支払う為にせっせとアルバイトをしながらのバンド活動でした。
対バンでライブの時は積極的に自分のドラムを使ってもらって、他のバンドに使われると
シンバルやドラムヘッドが消耗するのは痛いけど、自分のドラムセットだからこそ、自分のバンドのライブの時は自分が一番使いやすいので、バンドにとって一番良いと思っていたんです。

堀)
そうですよね。自分が知っているいつもの音ですもんね!

今)
そうそう。さっきの「日本ではドラムセットを持ちにくい」という話もリンクして、今のライブハウスでライブをやる時は、ドラマーはスティックとスネアとペダルだけで事足りるし、「家で叩けないから買えない」「置く所がないから買えない」となってゆき、そして「必要ないから買わない」になってしまっているドラマーが多いと思うんだ・・。
ギタリストがギター1本買うより、ドラマーがドラム1セット買うのは買いにくい…というのはわかるけど、だからといって「自分の音がない」というのは違うと思うし、自分の音がないのに、いい音楽を作るのは難しいと思うんだ。

堀)
よくわかります。それは凄くあると思います。

今)
勿論、世の中には「どんなドラムセットでも瞬時に自分色に染めてしまうくらい天才的なドラマー」もいるかも知れない。その人は別として、僕たちを含めたほとんどのドラマーは自分の音を探してゆかないと(自分のドラムを持って研究しないと)いい音は作れないし、チューニングも覚えないよね。
「チューニングを教えて下さい」と若い人に言われるんだけど、僕はそういう人に「出来るなら、まず自分で使いたいドラムセットを持って下さい」と言っています(笑)。
自分でドラムセットを持つとワクワクして叩きたくなり、貸しスタジオにドラムセット運んで叩いてみるといい音がしない事に気がつき(笑)、チューニングを研究し始める…というのが「自分の音」や自分のドラムスタイルを見つける事に繫がる第一歩だと思うんだ。
今回、僕たちがこういう対談をやって、読んで下さった若いドラマーが「スネア買ってみようかな?」とか「シンバル1枚試してみようかな?」なんて思うきっかけになってくれたら嬉しいです。

堀)
自分もデビューする前に、自分が憧れていたプロのドラマーのセットを見て「プロになるのに自分のセット持っていなかったらかっこ悪いな」って思ってセットを買いました。
そしてどうせ買うなら「人とは違う色にしたい」「人とは違う音にしたい」「人とは違うセッティングにしたい」・・と。デビュー当時にキットを揃えた自分は、おそらくまだ何も理解していなかったかも知れないけど、ライブツアーやレコーディングを経て、「自分だけのスタイル、自分だけの音、自分だけのセット」を意識して10年過ごしてきたからこそ、今があると思っています。
例えるならば、僕らの時代はミニ四駆が流行っていたので、「人と同じミニ四駆でいいのか?」と(笑)、買ったばっかりのマグナムセイバーで、人と同じマグナムセイバーでいいのかよ?」と(笑)。モーターも最初から付いているものでいいのか?...と(笑)。
僕は胴体を肉抜きして、モーターも速いやつにして、タイヤもスポンジに代えてカスタマイズする事が楽しくて「自分色に染める」という事をやっていたので、そういう工夫がドラムでの「自分の音」に繫がっていくのではないかと思います。

今)
絶対そうだよね。

堀)
今の時代ってデジタル世代なのはわかるし、決して否定しないけど、「生のドラム」にももう少し目を向けて欲しいなって思いますし、色々な楽器店でも試奏出来るように工夫しているし、リハスタでも高級スネア無料レンタルをやっていたりするので、色々研究出来る場所はたくさんあると思うから、やりようはいくらでもあるように思います。
なので「まずやってみる」で試して欲しいですね。

今)
そうそう! 今の時代、お金も大変だし、環境ないし・・はわかるけど、ちょっと努力と工夫をして、雲の上の存在になりがちな生ドラムに少しでも近ずいていって欲しいよね。
音楽で食べていく道を志している人は、なおさらだと思います。
僕は野球が好きなので、つい野球に例えてしまうんだけど(笑)、プロ野球選手で他人のグローブ借りて試合に出る人なんていないし、「ちょっとバット貸して」と言ってホームラン打てるバッターもいないと思うんです。
プロの選手だってバットの重さや長さ、角度など細かい事にこだわっているから良い成績を残せるように思うから、「プロを目指してます」というドラマーなら、まず「自分の音」を確立して欲しいな。

堀)
ライブのドラムセットの話になると、ライブはもうみんなの目に触れる場所だし、夢と憧れをあたえる場所なんです。ライブとなると(レコーディングと違って)今このセットで出来る事、見た目のかっこよさ、そして音楽性がバンドに合うかどうか・・。

今)
ドラムセットって、戦う要塞というか、秘密基地というか…ね。

堀)
そうです。ライブでは1つのセットで20曲くらいやるので、アルバムでやっている曲のぶんだけ1つのドラムセットで表現しようと思ったらタンバリンも付きますし、エフェクトだけの為のスネアも用意しますし、キャノンタム(細い筒のようなタム)も付きます(笑)!

今)
そうだよね。CD聴いて下さったお客さんに、ライブで「CDと同じ音がする!」とか「CDと同じフレーズだ!」とか感じてもらいたいもんね!

堀)
そうです! 逆にライブならではなアレンジとかもあるので、その違いを聴き比べたり、一致感だったりを楽しんでもらいたいです。

今)
うんうん。

堀)
だから、今の自分のライブでのドラムセットは「今の自分の全て」を上手い事出せるセットになっているし、見た目も「なにこれ?!」っていう感じの人と違う感があると思います。

今)
あのセットはパッと見ただけで「ベボベの堀君のセットだ」って誰でも思うよ!

堀)
そう思ってくれれば最高ですね。やっぱり全てにこだわりを持って作っているので。
そうやってみんな自分のカラーを出してくれればいい。

今)
今のセットのバスドラムのフロントヘッドがゴールドっていいね。
バスドラムを「ドン!」って踏むと、フロントヘッドが「ブンッ!」って揺れるから
「バスドラ踏んでる感」がお客さんに伝わっていいよね!

堀)
あのヘッドは客席とステージが近いライブハウスだと最前にいるお客さんの顔が写るらしく、自分じゃない別の角度に写るお客さんが見えて面白いのだそうです(笑)!そんな楽しみ方もあっていいですね。

今)
今回、堀くんと初めてこういう対談をやってみて、改めて「このアルバムはこうしてきたんだ」と再確認出来たし、「今度はこうしてやろう」というアイデアも湧いてきたよ。

堀)
エンジニアの川面さんも「よし!次も!」っと既に意気込んでいましたよ(笑)!小出さんも「今回のアルバムは良いです!でも、その次はもっといいです!その次の次はもっともっといいです!」と言っていましたし(笑)。やっぱりそうでありたいし、更新はし続けたいです。

今)
メンバーも、エンジニアさんも僕も、みんな成長しているから、来年(2016年)のどこかで、また次作のレコーディングがあるかもしれないけど、「その時は絶対負けない!」って思っているよ。

堀)
僕も相当、フレーズやリズムなりで新しい事しますよ!

今)
そうやってチームとして、それぞれが成長して、互いにせめぎ合って、更に良い作品を作れたらいいね。

堀)
それを聴いてくれる人に「おお〜っ!」って面白がってもらえたらいいです。
リスナーの方に僕のルーツを探ってもらって、今回のテーマだった「ドラマー目線」に一瞬だけでもなってもらって、楽曲を通してドラムを聴いた時に「あれっ!もしかしてこれは!」なんて、感じてくれたら楽しいです。
僕も今回の対談で「生ドラムでよかったな」ということを改めて感じることが出来ました。

今)
次回もまたこの延長線上で続けたいね。

堀)
この対談、定着させたいですね!

今)
そうだね。自然にこういう流れになったから、きっと続くよね。

堀)
そうやってドラムの面白さを少しでも広めていきたいと思います。

今)
それでは、今回はこれで終了とさせて頂きます。
ありがとうございました!

堀)
ありがとうございました!


【Special Thanks】(敬称略)
Base Ball Bearメンバー/玉井健二(アゲハスプリングス)/加茂啓太郎(Great Hunting/Universal Music Japan)/川面晴友/中村研一/
ユニバーサルミュージック/ソニー・ミュージックアーティスツ/株式会社カノウプス/Zildjian/株式会社ヤマハミュージックジャパン/
株式会社モリダイラ楽器/株式会社イケベ楽器ドラムステーション/春日幸弘(ウィッシング ウェル)/
summary

 

BACK TOP

 

 

© 2015 imamura-drumtech.com